フランス・インターナショナルラリー2023

世界各国の女性ライダーがフランスで集う
今年のWIMAインターナショナルラリーは、フレンチアルプスで開催されました。
第74回となる今回のラリーでは、世界各国から230名を超えるメンバーが集まり、
ウェルカム/フェアウェルパーティー、パレード、ツーリング、
その他開催国独自のイベントを一緒に楽しみます。

日本から参加するにはどうするの?
申し込みは半年以上前に始まります。ラリーに参加する場合、航空券、レンタルバイク、
ルートの検討など、各自で準備を始めます。最初はわからないことだらけですが、
WIMAでは、メンバーに質問したり相談したりすることができます。
今回、筆者はイギリスから出発し、フランスを縦断してきました。

いざ、フレンチアルプスへ!
今回の開催地はフランス南部のアルプス山脈。
イギリスを出発し、フェリーでドーバー海峡を渡り南下する約1,400kmの旅です。
フェリーでは、至れり尽くせりの日本とは違い、自分でバイクを固定しなければなりません。
ほかのライダーの様子を見ながら奮闘していると、やり方を教えてくれました。
フランスに入ると左側通行から右側通行に変わります。
これだけは間違えると事故につながるため、常に意識しておく必要があります。
開催地まで2泊3日のルートは大まかに決めていましたが、寄り道したくなるのがライダーの常。
一般道を利用して、シャンパーニュ地方ではブドウ畑に圧倒されながら、
小さな町や村を抜けて、バイクを走らせました。ルートの前半は直線道路が多く、
北海道の「天に続く道」や「ジェットコースターの路」の長距離バージョンという感じ、
中盤は国立公園内のなだらかなカーブが続き、リズムよく楽しめる道、
最後はアルプス山脈がドーンと現れ、ヘアピンカーブが連続するアルプスを登っていくという、
フルコースでした。アルプス山脈が目前に迫ってきたときには、ヘルメットの中で
「すごーい!」「アメージング!」、ありとあらゆる感動の言葉が口から出てきました。

ラリーのスタート!ウクライナからもメンバーが参加
夕方、会場に到着すると、4年ぶりに会う懐かしい友人の顔があちこちに。
夜のウェルカムパーティーでは、長距離の走行でお尻が痛いのは私だけではないようで、
疲れているにもかかわらず、椅子に座るよりも立っていたいというメンバーもいました。
ラリーにはウクライナ支部からアレーナとイリーナの2人も参加しました。
2,600kmを走ってきたアレーナは普段キーウの地下に身を潜めて生活しています。
今回の参加は日常になった戦争から一息つくため、
そしてWIMAメンバーの支援に感謝の気持ちを伝えるために来たと言います。
彼女からもらったステッカーには「In God we believe. In WIMA trust!!!
(神を信じ、WIMAを信頼する!!!)」と書かれていました。ラリー期間中は、
フランス支部のメンバーのお薦めルートのツーリングに出かける人もいれば、
会場でのんびり過ごす人もいます。私は、近場のツーリング、蒸留所見学、全員でのパレードのほか、
世界のツーリングやチャリティー活動などをテーマとした、
いくつかのプレゼンテーションに参加しました。

イランの勇敢な女性たち
プレゼンテーションの一つは、中東各国を何度もバイクで訪問しているベルギー人の写真家、
執筆家、教師、グラフィックデザイナー、ライダーなど、
様々な肩書を持つトルゥイによるイランについてのお話でした。トルゥイは、これまでに出会った
「男性優位の社会における女性ライダー」について、執筆や講演活動をしています。
今回は、彼女の友人でもあるイランの女性たちの話を紹介してくれました。
イランでは女性は「ヒジャブ」と呼ばれる布で頭や身体を覆うことが義務付けられています。
また、女性が免許を取得することは法律で禁止されています。
そんな中で人としての権利を手に入れるために行動する勇敢な女性たちに彼女は出会ってきました。
ライダー、スタントライダー兼バイクインストラクター、サイクリンググループ、サーファー、
長距離バス運転手、トラック運転手、タクシー運転手などです。
彼女たちの実情を知ってもらいたいと、
ベルギーの雑誌や新聞にインタビュー記事を掲載してきました。しかし、
2022年9月にヒジャブの着用の仕方が不適切だとして警察に逮捕された女性が、
その3日後に急死した事件をきっかけに、大規模な抗議デモへと発展しました。結局、
多くのデモ参加者が逮捕され、死刑判決に至るケースが相次ぎ、デモは鎮静化してしまいました。
その間も、トルゥイは女性たちと連絡を取り続け、
このような状況下で記事を公開してよいかと尋ねましたが、
女性たちは一様に「こんな状況だからこそ公開してほしい」と答えました。
全国版の新聞にも執筆したトルゥイは、もうイランに戻ることができないかもしれないと言います。
WIMAのメンバーたちは、このプレゼンテーションに涙をこらえながら聞き入っていました。
私自身も、バイクを楽しめることがなんとありがたいことなのかと改めて感じました。
トルゥイは9月から10月にかけて日本をバイクで旅する予定です。
どこかで見かけたら、ぜひ声を掛けてください。

2024年はルーマニアとオーストラリアの2回開催
ラリーでは、刺激的で心を動かされる女性ライダーたちに出会うことができます。
新旧の友人たちと過ごした5日間は、瞬く間に過ぎ、それぞれに帰路につきます。
仕事があるため真っ直ぐに家を目指す人、
キャンプをしながら家までの旅を楽しむ人とさまざまですが、
私は、往路とは別のルートで2泊3日のツーリングを楽しみました。
全日程が晴れという幸運に恵まれ無事に旅を終えたところですが、
すでに来年開催されるルーマニアとオーストラリアで開催されるラリーが楽しみです。
今回のラリーのホストであるWIMAフランス支部、特にリーダーのヴィオレッテに感謝を表します。

文・写真:WIMA 日本支部及び Trui Hanoulle
http://www.wima.gr.jp/(WIMA 日本支部)
http://www.wimaworld.com/(WIMA インターナショナル)
https://truihanoulle.be/move-she-does/(トゥルイ·ハヌレ Move She Does)