2015 インターナショナルラリー in オーストラリア
2015 International Rally in Australia
今年は特別にオーストラリアで2度目のラリー開催
通常は年1回開催されるインターナショナルラリーですが、現在は欧州メンバーが多く、できるだけ多くのメンバーが参加できるようにとの配慮から、欧州以外でインターナショナルラリーが開催される年は2回開催されます。本誌前号でレポートした7月のスウェーデンに続いて、今回のラリー会場はオーストラリアのフィリップアイランドです。
WIMAメンバーがMotoGPTMマーシャルに!
ラリー会場にフィリップアイランドが選ばれたのは、MotoGPTM第16戦オーストラリアGPがフィリップ・アイランド・サーキットで開催されるからなのです。オーストラリア支部のメンバーは毎年数名が、レースの運営をサポートする、トラックマーシャルやフラッグマーシャルまたはメディカルマーシャルのボランティアとして活躍しています。そこで、世界のWIMAメンバーも、これに応募してはどうかという計らいだったのです。
今回多くのメンバーが担当したトラックマーシャルの任務は、コース脇に待機して、アクシデントが起こった場合にライダーが復帰するのをアシストしたり、復帰できない場合はバイクを撤去すること、また飛び散ったパーツがコース上に残らないようにすること、オイルがコース上に流れた場合にオイルの処理することなどです。
ボランティアとはいえ、レース運営にとって不可欠で危険を伴う仕事です。7月にマーシャルの申請が受理されたというレターがサーキットから届いてから、32ページに及ぶレース・マーシャル・ハンドブックを熟読して頭に叩き込む作業が始まりました。これは楽しいお勉強です。オーストラリアへ向かう飛行機の中でもWIMAメンバーは皆ハンドブックを読んでいたようです。
レース開催週の木曜日の午後にサーキットに到着したら、まずはテントの設営です。コースサイドのキャンプ場が、この週末の我が家になります。その後は、マーシャルの初心者講習として、まずは映像を使った座学で、ハンドブックの内容の中でも特に重要な点が説明されました。ここで、ハンドブックの勉強中に、コース上のゴミやパーツは、ほうきで掃くものだと思っていたら、足で蹴り出すか手で拾うというルールがあり、なぜ掃かないのだろう思っていた疑問が解けました。タイヤラバーが乗った路面を掃いてしまうと、部分的にグリップが変わってしまうので、それを防止するためだったのです。深いですね。座学の後はコースに出て実践練習です。倒れたバイクを起こし、4人1組でロープを使ってグラベル(砂利)からバイクを運び出す練習をしました。また、メディカルマーシャルのヘルプに入る可能性もあるため、ストレッチャーにライダーを乗せる練習もありました。
いよいよ金曜からワクワクドキドキの実践です。配置された場所によって忙しさは大きく違います。初日から走りっぱなしのメンバーもいましたが、幸か不幸か、私が配置された第4コーナーのイン側では一度もアクシデントがありませんでした。唯一動きがあったのは、背後にワラビーが現れたことでした。フィリップアイランドは豊かな自然の中にあり、野生動物をよく見かけます。この時は、ワラビーがコース内に入らないように見張ることがチームのミッションでした。日曜日のMotoGPTM決勝レースでは、17回目のマーシャルだというベテランの女性チームリーダーが、無線で入ってくる「イアンノーネのバイクにカモメが激突」などの細かい情報まで逐一伝えてくれたので、レース展開がとてもよく分かり、順位が目まぐるしく変わるエキサイティングなレースを間近で楽しむことができました。もちろん、レース中は緊張感があり、応援するライダーがいても、心の中で声援を送るのみでしたが、オーストラリア人のマーシャル達も、レース後は"What a race!"と興奮がなかなか冷めやりません。そして、レースが終わったコース上は表彰台へと急ぐ観客で溢れかえり、私たちマーシャルも表彰台の真下でシャンパンファイトを観ることができました。
500名を超えるマーシャルの1人としてオレンジのつなぎに身を包んで、忘れられない体験ができ、特別な形でMotoGPTMを満喫することができたのは、WIMAの仲間がいたからこそです。心から満足した週末でしたが、さらにもう1週間、別の楽しみが待っていました。WIMAのインタナショナルラリーが翌日から始まるのです!
WIMAインターナショナルラリー
ラリー会場は、サーキットから北へ約2キロの距離にある宿泊施設です。2キロといっても、その間は草原なので、お隣という感じです。まず、私たち海外メンバーは、レンタルバイク店があるメルボルンまでメンバーの車で向かいました。レンタル店では早速、日本をはじめ色々な国から来たメンバーと遭遇です。オランダとスウェーデンの友人と約2時間のツーリングを楽しみながら、ラリー会場に到着です。
ラリー参加者は、日本人9名を含む75名です。欧州メンバーは、オーストラリアに来るのにとても時間がかかるため何度も来るのは無理だからと、3カ月も旅をする人が多くいます。オーストラリアは10月が春にあたりますが、春から夏まで過ごすという感じですね。
2日目に、私たち日本人は、限られた滞在期間を最大限まで楽しもうと欲張って、有名なグレートオーシャンロードまで走りました。でも、全長約250キロのグレートオーシャンロードに往復の距離をプラスすると、全部を走破することは無理なので、残念ながら少しだけ垣間見たという感じです。それでも1日で約550キロのツーリングでした。この日の夜には各国出し物大会があり、ツーリングの疲れも何のその、日本支部は英語版の妖怪ウォッチダンスを披露して、会場は爆笑の渦となりました。
ラリー期間中は、連日お勧めのツーリングコースが用意されていました。ツーリングの目的地として行ったヒールズヴィル・サンクチュアリは、オーストラリア特有の動物が勢ぞろいで、野生動物の病院も併設されており、動物の自然な姿を見ることができました。翌日はウィルソンズ・プロモントリー国立公園に向かいましたが、島を出て、海岸線、丘陵地、ワインディングと、次々に楽しい道が続きます。この国立公園では野生動物の姿をたくさん目にしました。また島内でも、動物園や岬をまわりながらのツーリングをのんびり楽しむことができました。どこに行っても交通量が少なく、一般道でも制限速度100キロで快適に走れますが、動物の飛び出しだけは注意しなければなりません。自然保護区がたくさんあり、美しい景色が目の前に広がり、ヘルメットの中がマイナスイオンで満たされているかのような気がしました。
フィリップアイランドでは、同じく自然保護区に住む野生の世界一小さいフェアリーペンギンたちが日没になると次々にグループごとに海から上がってきて巣に戻るために、よちよち行進する姿が見られます。これがペンギンパレードと呼ばれていてとても人気があります。私たちが訪れた日は2142羽が確認され、思わず笑顔になってしまうほど可愛らしい姿でした。
そしてペンギン達に負けじとWIMAもパレードを行いました。パレードはラリー中、メンバーがとても楽しみにしているイベントで、いつも国旗などでバイクを飾り付けて出発します。島内のカウズという町は、小さいものの、サーキットがある島だけにモータースポーツが愛されているのか、パレードの隊列が通ると多くの沿道の人たちが手を振ってくれました。
ラリーの締めくくりは、フェアウェルパーティです。次の朝に実際にお別れをするのは寂しい瞬間なのですが、前日の夜は楽しかった1週間を振り返って笑いが絶えません。また、WIMAが現在チャリティ活動として協力している、Motorcycle Outreach(MoR)への募金がパーティ中に行われ、256.20ドルが集まりました。MoRは、発展途上国の十分な医療が受けられない地域の人々に“バイクで医療を届ける”ことを目的とした運動です。とくに郊外において、ワクチン接種、乳幼児の栄養、マラリアやデング熱の治療、母親の健康に関する知識不足は深刻な問題であるにもかかわらず、これらを届けるために必要なトレーニングやバイク自体が不十分で、それに対する十分な財政予算が割り当てられていないのです。メンテナンス不足で故障したバイクがあっても、修理費用が高額でバイクは放置されたままになります。社会貢献活動にも、バイクにも、パーティにも、ばか騒ぎにも、全力で取り組むのがWIMAなのです。
今回は、インタナショナルラリーとしては参加者数が少なめだったため、いつもに増してアットホームな雰囲気でした。また、2010年に日本ラリーに参加したメンバーが多かったため、朝の洗面台では「オハヨーゴザイマス」と挨拶してくれる人が多くて、一瞬自分はどこにいるんだろうと思ってしまいました。WIMAのメンバ間のコミュニケーションでは「バイクと笑顔が共通語」なのですが、「今日は楽しかった?」と英語で質問された英語が苦手な日本人が、「すごくきれいな道」「走って」「超気持ちよかった~」と完全な日本語と大きなジェスチャーで答えると、「オー、グレイト!」と、なぜか伝わっているという不思議な光景も見られました。来年のハンガリーでのラリーが今から楽しみです!